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特許は誰のモノ?無条件で会社?それとも条件付き?


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こんばんわ。

職務発明に関する特許の権利は一体誰のものになるんだろうか・・・?

先日朝日新聞から

特許、無条件で会社のもの 社員の発明巡り政府方針転換:朝日新聞デジタル

なる記事が掲載されましたがはたして真実は・・・?

 職務発明による特許の権利は無条件で会社のものになるのか

現在の特許法では

企業の従業員が発明した特許(職務発明)について、そもそも発明者に帰属することを前提とした上で(特許法第29条第1項柱書)、使用者である企業側に実施権(特許を使用した製品を開発し、販売するなどできる権利)を与える。一方で、従業員が企業に職務発明に係る権利を譲り渡したときは、従業員が「相当の対価」を受ける権利を保障している。

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それを無条件で会社に帰属させる法案が来年の通常国会で提出されるというのだ。(朝日新聞によると)

これが本当なら発明者も意欲を大きく削ぐことになるだろう。

 

でも他の記事を見てみると・・・

日本経済新聞を見ると

特許庁は企業の従業員が発明した特許について、条件付きで企業に帰属させる方向で検討に入った。いまは発明した従業員が特許を持つが、企業の設備や同僚の協力なしに発明するのは難しいためだ。ただ従業員に報酬を支払う新ルールを整備し、企業が発明者に報いることを条件とする。

社員の発明、特許は企業に 産業界が報酬ルールに理解 :日本経済新聞

条件付きで企業に帰属させる方向となっている・・・

 

条件付きって書いているが・・・

朝日新聞が書いている無条件で会社に帰属するのと日本経済新聞が書いている従業員に報酬を支払う新ルールを整備し、企業が発明者に報いることを条件として会社に帰属するのでは全くと状況が変わってくる。

 

結局どっちなの?

2社の新聞を読むと結論が決定的に違う状況になっている。

と言うことでおおもとの特許庁職務発明に関する調査委員会の報告書をみてみた。

なにやら職務発明制度の検討が加速されることが期待されるとのよくわからない結論になっていた。

詳しく見てみても無条件で権利を企業に帰属すべきだとの文言は見当たらなかった。

報告書では特許の帰属に関していろいろな条件で検証されていた。

朝日新聞は産業界からの要望通りに帰属すると無条件になると理解したのだろうか。

そこには職務発明の特許を受ける権利は法人に原始的に帰属するとある。

ただし、企業の研究者によるインセンティブ施策は法的強制ではなく企業の自由設計に任せるとある。

企業の自由設計となるとインセンティブを与えない可能性があるから無条件としたのだろうか

なかなかの極論だ。

 

しかし日本経済新聞をさらに読むと

特許庁が3日に開いた有識者会議では、経団連の和田映一氏ら産業界の委員が「法律で発明者に報奨することを定めるのは、企業と従業員の双方に有意義」と表明した。

 これまで経団連は「発明の奨励に法的な介入はなじまず、会社側が自由に設定すべきだ」と主張してきた。発明の報酬は各企業が決めればいいとの考えだったが、産業界は発明者への報酬について法規定する考え方を容認する姿勢に転じた。

ともある。

発明者に報奨することを定めるのはという文言がある。

これは無条件にはならない。

朝日新聞はこの委員会の内容をしっかり見ていないのだろうか?

 

有名メディアの記事とはいえ鵜呑みにはできない

朝日新聞日本経済新聞で異なる内容が記載された職務発明に関する記事。

2つの記事を読みさらに特許庁の報告書を見るとどうやら日本経済新聞の内容が正しそうだ。

朝日新聞だけを見るととんでもないことが行われるように思えたが実際にはそうではなかった。

朝日新聞がなぜこのように偏った報道を行ったのかは定かではない。

最近、世紀の大誤報を認めた新聞社だけに記事を疑ってかかったのは正解だった。

情報をそのまま受け取るのではなく自分で吟味しなくてはいけないと改めて思わされた。